Sunday, July 10, 2016

映画『クリーピー』について

比良野アンジェリカ:この前、黒沢清監督の『クリーピー』を観てきたんだけど、だいぶ前に同じ監督の『岸辺の旅』を見たんだよね。私はいつも後ろのほうで見るんだけど、かなり前列のほうに、お化けにしか見えないおかしな人がいたの。スクリーンの下にその人の影がチラチラ見えて、たえず動いてる。トイレにでも行きたいのか、立ったり座ったり、席を探すような動作をずっとしてて。途中から「オエェエ」みたいな声も出してるし……そんなに大きな声じゃないんだけど。映画よりそっちのほうが怖くなっちゃって。で、途中でその人がついに出ていったから、あれが何だったのかいまだにわからない。

刺星:その話、拾ったほうがいい?

比:いや、それを枕にして……。『クリーピー』の時は、終わって、映画館の外の喫煙所で煙草吸ってたら、よくわからない婆さんが話しかけてきて。「いやー、こんなところでしか吸えないから」「そうですねー」 とか世間話してたら、「あれ、私の隣にいた人じゃない?」って。確かに、私のふたつ隣に、似た人が座ってたからさ。そしたら、「映画っていうのはよくわからないけど、あれで終わっちゃうのかねえ」って、ラストに不満があるみたいで。「ドラマの『火の粉』のほうが面白かった」って言うんだよ。「内容が似てるんですか?」って訊くと、「毎週毎週続きが気になって大変だったよ」って。そりゃ、映画は2時間で終わるけど、ドラマはたくさんやるからね。

刺:そのドラマ、存在する?

比:最近やってたよ。

刺:そんなドラマ無かった、ってオチだと思った。

比:うん、婆さんのほうは、別に面白い話じゃなかったな……。

刺:そういう系の話だと、うちの近所に、引越して3年、ずっといるんだけど……地域の振興会みたいな集まりで、お祭りの神輿をしまっておくような建物がある。たぶん、個人の宅なんだよね。引き戸を開いて、神輿を出してくる。そこに、午後になると毎日、白髪のベケットみたいなお爺ちゃんが、引き戸から顔を出して、ずっと同じ方向を見ている。下のほうは見えないけど、おそらく椅子に座っている。本当に毎日いるんだよ。冬の夕方なんかは、暗闇の中に顔だけ浮かんでるように見える。これもオチがない話なんだけど、なんか……「いいな」って……。

比:それは、少し『クリーピー』感あるね。

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